切断/義肢リハビリテーションの基礎知識
義足は万能でなくとも便利なもの
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義足は動力(モーター)を持ちません。歩くための力源は人間です。
例えば膝より上で切断した人が座った姿勢から立ち上がるとき、本人が頑張るしか方法はありません。
ですから残った脚を丈夫に保つことは大切ですし、切断した脚の筋力も必要です。
一方で義足は体重を預けることで便利な道具にもなります。
片脚立ちが不可能な場合、義足は「脚に着ける杖」となって機能します。
体重を積極的にかけることが出来れば、地面からの反力を利用して、より力強く歩けるようになります。
操作を覚えなければならない、自ら力を発揮しないと前に進めない、でも使えると移動が便利。
義足は乗り物に例えると、オートバイではなく自転車に似ています。
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大腿切断と下腿切断の違い
大腿切断は膝が残りませんが、下腿切断は膝が残ります。
膝関節が残れば、以下について早期に習熟が図れます。
1. 転倒を回避する
2. 力強く地面を踏みつける
3. 思い通りの位置に足を置く
4. 義足をつけていない時の移動
これは残った脚で発揮できる筋力や感覚、扱う義足の重量、両膝で移動出来る便利さなど多くの点で下腿切断が有利であることを意味します。
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大腿切断者が義足の習熟を図るには計画的な訓練が必要です。
先ず健常側⇔切断側を問わず身体機能の向上が必須です。
そして切断部位が高位になるほど、補完する義足のセッティングがとても重要になります。
大腿義足は比較的長期間の訓練を要しますが、身体に合った義足の存在と適切なトレーニングの積み重ねで日常生活を獲得することが可能になります。
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股義足はどうやって歩く?
股関節離断の人が使う義足を股義足といいます。
股関節離断は片脚を構成する骨が存在しません。
一本脚ではイメージしにくいかもしれませんが、歩くことは可能です。
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※右脚が義足です
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※右脚が義足です
義足に体重をかけるとき、高い椅子に腰掛けるように乗りこなすことで自分の脚を前に出します。
次に腹筋や背筋で骨盤を前後に動かして義足を前方へ振り出します。
長時間義足に体重を預けることが出来れば歩幅が広がり、疲れない効率的な歩行が可能になります。
義足を振り出すときは、自分の脚でバランスを保ちながら前方に重心移動することで、左右とも歩幅を拡げてスピード感のある歩行が可能になります。
股義足で走ることが出来る人も少人数ですが存在します。
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義足装着の価値
多くの場合、義足は歩行を目的に製作されます。
しかし、義足を有効活用できる場面は他にもあります。
車椅子で生活する人でも、義足を着けることでコスメティックな問題を補う効果があります。
少しでも義足で立つ機会があれば視野も高くなり、気持ちも晴れやかになるでしょう。
介助を要する高齢者の場合、義足を着ければベッドから車椅子への移乗で介助量が軽減されます。
義足は本人のプライドを取り戻す役割があります。
また、家族や周囲の介助者のために役立つ道具でもあります。